今日は早朝から
マイスターファクトリー2期生を連れ、
一宮の三星毛糸さんに見学に行かせて頂きました
尾州(尾張)一帯は、奈良時代に始まった絹織物の産地です。
木曽川が作る扇状地、水捌けの良い自然堤防や三角州を桑畑として利用し、
農家の副業として織物が発達しました。絹は高級品で一般の人は手が届きませんでしたが、
その後に綿織物が登場し、絹織物は一旦衰退しましたが、鎌倉時代初期に再び織られるようになったそうです。
毛織物自体は明治の終わり頃から始まったので、まだ100年ほどの歴史です。
三星毛糸さんでは、50~60年前から現在に至るまで、
ションヘル織機だけが稼動しており、
織り上がった生地は、自社の染色整理工場で仕上げをされてます。


ションヘル織機(シャトル織機)が動く機場は、
シャトルが飛び交う心地良い音(少し大きいですが)がします。
手機(てばた)に動力装置を付けただけというションヘル織機は、ウール本来が持つ性質を損なうことなく
手織りの風合いを保ちながら、手触りの柔らかい上質な生地を織り上げることが出来ます。
ここでも高齢化が進み、跡取りはいらっしゃらず、継続が危ぶまれています。


熱心に教えて下さる工場長。
無粋にも「何年されてますか?」と聞くと、
お茶目な表情で、「歳がばれるやないか!」と言われました。


ションヘル織機の存在感に圧倒される2期生。
僕も今まで何度も見せてもらってきましたが、何度見ても圧巻です!


色の付いた『ゴマ』のセッティングで柄が変わります。
今のシャトルレス織機は、コンピューター制御になっています。


織機の上に設置された機械は生地に耳を付けるためのもので、
デザイン(文字など)は、茶色の紋紙で、その織り込まれる内容が指示されます。
これも今の織機だと、コンピューター制御です。


画像の左の方に、シャトル受けが4段見えますが、わかりますか?
ここからシャトルが勢いよく飛び出してゆき、またここにシャトルが戻ってきます。
このシャトルが緯糸(ヨコ糸)を打ち込んでいきます。以前、葛利毛織さんの時に詳しく書いています


画像の奥の方(右側)にある色の付いた『ゴマ』もそうですが、
手前に見える鉄製のゴマのようなものも、デザインを指示するためのもので、
この数が多くなればなる程、長くなればなる程、複雑なテキスタイルデザインになってゆきます。


経糸(タテ糸)が切れたので、機械を止めて、糸をつないでおられるところです。
機織は経糸を如何に均一なテンションで綺麗にセッティングするかがとても重要で、神経を磨り減らす作業です。


続いて、織り上がった生地は、皆さんが見慣れた生地ではなく、
整理行程(フィニッシング)を経て、完成します。
織り上がったばかりの生地に、化粧は施されていません。
この化粧(整理行程)の上手い下手で、見栄えが変わるので、とても大切な行程です。
以前、テイラー&ロッヂが自社から整理行程を外注に切り替えたときも「あのテイラー&ロッヂが!?」
と言われたほど、生地の出来の良し悪しに大きく影響する大切な行程です。


工場内には、たくさんの機械がたくさんあって、
出したい風合いによって使う機械を組み合わせます。
流れ作業ではなく単独稼動させるので効率は悪いですが、
使う機械の組み合わせ方で細かなオーダーにも応えられます。

大野工場長の詳細なご説明に聞き入るマイスターファクトリーの2期生たち。
現場はスニーカーで!と、お気遣いのご連絡を頂き、カジュアルな服装で失礼しました。


見学が終わってから、
アーカイブ(過去の生地見本)を見せて頂き、60年ほど前の生地から保管されていました。
それらを見せてもらったり、画像の『枡見本』を見せてもらったり、
生地が織られる前の企画段階の話も教えて頂け、
とても有意義な経験になりました。


こちらはダブルフェイスの枡見本です。
経糸(タテ糸)を揃えた後、緯糸(ヨコ糸)の色を少しずつ替えていく事で、
このような生地(枡見本)を織る事ができます。そしてこの中から、どの色にするかを決めてゆきます。


びっくりしました!カセンティーノ発見!
見慣れた表情と何か違うなと思ったら、ケンピが入っています。
右が加工前の生地で、左が加工後の和製『カセンティーノ』で、プルミエールビジョン
出品された物のようです。ずいぶん前から織られていたそうで、ビックリ!!
この生地も、低速織機で織られているんですよ!!!


この前のA/Wでオーダー頂いたコートに使ったポッサムの生地
こんな小さな動物の毛を使っているので、めちゃくちゃ手間が掛かってます!


2期生のレポートの中に嬉しい内容がありました。
使う材料によって生地の価格が変わる事は想像していたけれど、
その奥にある、生地を織る人たちの毎日の苦労と努力の値段は余り知られていません。
同じ材料を使っても、手間隙を掛けて織られた生地と、効率を求めて作られた生地とでは、経年『変化』か、
それとも経年『劣化』かの違いがあります。どちらが良いかは人の好みなので何とも言えませんが、
モードより、長く着るクラシックな洋服なら、経年劣化では寂しいですよね。
やはり手間隙かけて織られた生地は、長く着て頂けます。
例えば家も、30年で伐採した木で建てた家は30年しかもたないけれど、、
樹齢100年の木で作った家は、100年以上はもつ!と言われる事と、全く同じですね。

どうやって生地が作られるかを知り、
生地に関わる方のお話を直接聞けた貴重な経験を、
今後のモノ作りや接客に役立て、業界の活性につなげて下さい。

三星毛糸の岩田社長を初め、
窓口となってご尽力くださった森谷さん、
またサポートして下さった神田さん、大野工場長、
皆さまの貴重なお時間を割いて頂き、今回の見学会が実現した事、
本当にありがとうございました。この経験を無駄にする事なく今後につなげていきます。
ゆっくり考えている時間は、もうそんなにないと思っています。
産業革命から今まで発展してきた事の歪!?
上の文章をクリックして頂くと、その文章の最後の方に、産業革命の事を少しだけ書いています。
世界史?中学校の歴史の復習!?にちょっと読んでみて下さい(笑。