2008年4月11日の続きです。

その後、彼女は色々な情報をもとにアグレッシブに動き、

神戸もの作り大学への入学も決まり、関西に引っ越して来ることになりました。

それまでの蓄えも、引越し費用や準備等で底を尽く日も時間の問題、早く仕事を確保せねば、、



横浜で経験を積んでいたお直しの仕事をするにしても、

単なる縫製の職人を目指すのではなく、

クオリティーの高いラインをもった洋服を縫いたいという意識の高い彼女ですから、

それを考えた上で、どんな順番で働けば(学べば)よいのか、

僕なりに整理しながら慎重に考えながら、伝えてゆくよう心がけました。



そして彼女は最初、有名なお直しのお店で働いていましたが、

その後、販売量を誇る有名なテーラーで店頭に立つことで経験を積ませてもらい、

今はBoitsつながりで、とある『KITON』 の売り場で頑張っています。



そう、、最初は〝寸法的な感覚〟を身につけるために、

人の体を立体寸法で捉えられるよう、採寸の現場でフィッター経験を積み、

次に、プレタの〝練り上げられたクオリティーの高いライン〟を見る目を養うために、

日々秀逸な洋服を見ることのできる現場で感性的な経験を積んでいるのです。



そして、今でも通っている学校の勉強では、

ラインのクオリティを意識しながら自分でパターンを引き、

自ら描いたパターンを使って自分で裁断した生地を、自らの手で縫い上げる、、

そんなハードな毎日を過ごし〝量から質へ〟と実力を伸ばしています。



これからも益々、この世界目指す人が増え、業界が発展し、

もっと言うと、ただ単に縫える人ではなく、彼女が目指しているところ、

技術と感性を持ち合わせた職人さんが増える事を願って僕も何かの役に立てれば、、

でなければ、結局は困るのは僕たちスーツ好き、、

職人技術の終焉は、もうそこまで、、



そんなことを思い考えていると、

塗士(ぬし)でありながら、晩年はプロデュサーとして、活躍された

輪島塗の漆芸家〝角偉三郎〟さんの事を思い出しました。

もの創りは、家でも器でも、そして洋服でも同じで、

自分とは違うもの創りの世界を勉強すると、色々な角度から自分に返ってきます。