今日、届いたロンドンストライプのシャツ地。
英国のシャツファブリックメーカー『acorn(エイコーン)』製なんですが、
トーマスメイソンにいたチャットバーン氏が、1975年に英国ランカシャーで創業したメーカーです。
今も、昔ながらの低速織機を使ってシャツを織り続けているメーカーです(一部は高速織機に変わっていますが)。


英国、ランカシャー、低速織機、、で、皆さんは何をイメージしますか?
ここで気付かれた方は、余程の歴史通か、洋服好きか、メイカーズを読まれた方でしょう(笑)。
そうです!どれも産業革命のキーワード。以前、産業革命について簡単に書いた事があるので、読んでみて下さい。
ちなみに、英国のシャツ地として有名だったトーマスメイソンもランカシャーに工場があったのですが、
今、その跡地は倉庫として貸し出され、イタリアのアルビニ傘下
に入りました。
Sさんがお選びになられた、この『普通のロンドンストライプ』も
低速織機で織られた生地で、1ヤード巾(92cm)です。



今日は早朝から
マイスターファクトリー2期生を連れ、
一宮の三星毛糸さんに見学に行かせて頂きました
尾州(尾張)一帯は、奈良時代に始まった絹織物の産地です。
木曽川が作る扇状地、水捌けの良い自然堤防や三角州を桑畑として利用し、
農家の副業として織物が発達しました。絹は高級品で一般の人は手が届きませんでしたが、
その後に綿織物が登場し、絹織物は一旦衰退しましたが、鎌倉時代初期に再び織られるようになったそうです。
毛織物自体は明治の終わり頃から始まったので、まだ100年ほどの歴史です。
三星毛糸さんでは、50~60年前から現在に至るまで、
ションヘル織機だけが稼動しており、
織り上がった生地は、自社の染色整理工場で仕上げをされてます。


ションヘル織機(シャトル織機)が動く機場は、
シャトルが飛び交う心地良い音(少し大きいですが)がします。
手機(てばた)に動力装置を付けただけというションヘル織機は、ウール本来が持つ性質を損なうことなく
手織りの風合いを保ちながら、手触りの柔らかい上質な生地を織り上げることが出来ます。
ここでも高齢化が進み、跡取りはいらっしゃらず、継続が危ぶまれています。


熱心に教えて下さる工場長。
無粋にも「何年されてますか?」と聞くと、
お茶目な表情で、「歳がばれるやないか!」と言われました。


ションヘル織機の存在感に圧倒される2期生。
僕も今まで何度も見せてもらってきましたが、何度見ても圧巻です!


色の付いた『ゴマ』のセッティングで柄が変わります。
今のシャトルレス織機は、コンピューター制御になっています。


織機の上に設置された機械は生地に耳を付けるためのもので、
デザイン(文字など)は、茶色の紋紙で、その織り込まれる内容が指示されます。
これも今の織機だと、コンピューター制御です。


画像の左の方に、シャトル受けが4段見えますが、わかりますか?
ここからシャトルが勢いよく飛び出してゆき、またここにシャトルが戻ってきます。
このシャトルが緯糸(ヨコ糸)を打ち込んでいきます。以前、葛利毛織さんの時に詳しく書いています


画像の奥の方(右側)にある色の付いた『ゴマ』もそうですが、
手前に見える鉄製のゴマのようなものも、デザインを指示するためのもので、
この数が多くなればなる程、長くなればなる程、複雑なテキスタイルデザインになってゆきます。


経糸(タテ糸)が切れたので、機械を止めて、糸をつないでおられるところです。
機織は経糸を如何に均一なテンションで綺麗にセッティングするかがとても重要で、神経を磨り減らす作業です。


続いて、織り上がった生地は、皆さんが見慣れた生地ではなく、
整理行程(フィニッシング)を経て、完成します。
織り上がったばかりの生地に、化粧は施されていません。
この化粧(整理行程)の上手い下手で、見栄えが変わるので、とても大切な行程です。
以前、テイラー&ロッヂが自社から整理行程を外注に切り替えたときも「あのテイラー&ロッヂが!?」
と言われたほど、生地の出来の良し悪しに大きく影響する大切な行程です。


工場内には、たくさんの機械がたくさんあって、
出したい風合いによって使う機械を組み合わせます。
流れ作業ではなく単独稼動させるので効率は悪いですが、
使う機械の組み合わせ方で細かなオーダーにも応えられます。

大野工場長の詳細なご説明に聞き入るマイスターファクトリーの2期生たち。
現場はスニーカーで!と、お気遣いのご連絡を頂き、カジュアルな服装で失礼しました。


見学が終わってから、
アーカイブ(過去の生地見本)を見せて頂き、60年ほど前の生地から保管されていました。
それらを見せてもらったり、画像の『枡見本』を見せてもらったり、
生地が織られる前の企画段階の話も教えて頂け、
とても有意義な経験になりました。


こちらはダブルフェイスの枡見本です。
経糸(タテ糸)を揃えた後、緯糸(ヨコ糸)の色を少しずつ替えていく事で、
このような生地(枡見本)を織る事ができます。そしてこの中から、どの色にするかを決めてゆきます。


びっくりしました!カセンティーノ発見!
見慣れた表情と何か違うなと思ったら、ケンピが入っています。
右が加工前の生地で、左が加工後の和製『カセンティーノ』で、プルミエールビジョン
出品された物のようです。ずいぶん前から織られていたそうで、ビックリ!!
この生地も、低速織機で織られているんですよ!!!


この前のA/Wでオーダー頂いたコートに使ったポッサムの生地
こんな小さな動物の毛を使っているので、めちゃくちゃ手間が掛かってます!


2期生のレポートの中に嬉しい内容がありました。
使う材料によって生地の価格が変わる事は想像していたけれど、
その奥にある、生地を織る人たちの毎日の苦労と努力の値段は余り知られていません。
同じ材料を使っても、手間隙を掛けて織られた生地と、効率を求めて作られた生地とでは、経年『変化』か、
それとも経年『劣化』かの違いがあります。どちらが良いかは人の好みなので何とも言えませんが、
モードより、長く着るクラシックな洋服なら、経年劣化では寂しいですよね。
やはり手間隙かけて織られた生地は、長く着て頂けます。
例えば家も、30年で伐採した木で建てた家は30年しかもたないけれど、、
樹齢100年の木で作った家は、100年以上はもつ!と言われる事と、全く同じですね。

どうやって生地が作られるかを知り、
生地に関わる方のお話を直接聞けた貴重な経験を、
今後のモノ作りや接客に役立て、業界の活性につなげて下さい。

三星毛糸の岩田社長を初め、
窓口となってご尽力くださった森谷さん、
またサポートして下さった神田さん、大野工場長、
皆さまの貴重なお時間を割いて頂き、今回の見学会が実現した事、
本当にありがとうございました。この経験を無駄にする事なく今後につなげていきます。
ゆっくり考えている時間は、もうそんなにないと思っています。
産業革命から今まで発展してきた事の歪!?
上の文章をクリックして頂くと、その文章の最後の方に、産業革命の事を少しだけ書いています。
世界史?中学校の歴史の復習!?にちょっと読んでみて下さい(笑。



canonicoのホップサックのジャケット地(280g)には、とてつもないカラーバリエーションがあります。
欲しいけど、買う勇気のない120色色鉛筆ですが、それくらいあります。
プレタ(既製服)だと、ない色でも作ってしまいます!


僕達が簡単に手に入れられる色は、
黒、紺、ブルー、グレーあたりの無難な色です。
発色の綺麗な色は、どこかのマーチャントに頼む事になるので、
1着1着海外から送ってもらう事になり、その分が価格に反映されて高くなります。
すると、お客様に買って頂く価格にも跳ね返ってしまいます。
発色の綺麗な色を一色選んで一反まとめて買えば安くなるのですが、
ウチみたいな小さな店がいくら頑張って販売しても、売り切るまでに何年かかる事やら、、
日本の羅紗屋さんも、あまり数の出ない色を抱えて、カット売りしてくれません。
特にこんな不景気だと、無難な色ばかりが売れるので、余計に、、
ウダウダごめんなさい、生地探しは悩みの種です。
既製服で使われるような綺麗な生地が、
簡単に手に入れば嬉しいです。




今日、Nさんがお選び下さった生地です。
先日先にオーダー頂いたお洋服をお渡しの時に、
たまたま机の上に出ていた生地を気に入って下さいまして、
その時に僕が「この生地なら工房で仕立てさせて頂いたら、もっと
味わい深いお洋服になりますので、お勧めですよ!」と、お伝えしたんです。
Innes Chambers 『VICTORY』

その言葉に、Nさん凄くご興味を持たれ、
すかさず「生地によって仕立てを替えた方が良いって、
仕立て方で、そんな違いが出てくるの?」と、ご質問を頂きました。

その生地はラムズゴールデンベールを使用し、
更にその中でも、ほぼ同じ繊維長の原毛を使っており、
ドブクロス織機で織り、油脂分をたっぷり含んだ天然石鹸で洗い、
その後の乾燥も、乾燥機ではなく、10日間もかけて、ゆっくりと自然乾燥させるといった
昔ながらの製法を採っている生地でした。昔はこれが普通でしたが、今では気の遠くなるような作業です。
(この生地につきましては、後日改めて紹介させて頂きます。)

こんな生地に比べて、最近の織機で織られた生地は、
緯糸にかかるテンションが強く、生地が持つ柔らかい風合いや弾力性が失われてしまいます。
それに対して、ドブクロス織機でゆっくりと低速で織られた生地は、
糸にテンションがかからず、ふんわりとしたウール本来の柔らかな風合いと弾力性に富んだものに仕上がります。

そんな生地は、時間がかかってでも、手でゆっくりと縫えば、
生地が持つ風合いや弾力性を損なわずに、着用感の良い立体的な洋服に仕上がります。
弾力性のある生地に高速ミシンで縫った場合と、
ゆっくりとした速度(部分に世よっては糸と針で)で縫った場合では、
実際に縫った所を見比べてみると、その差は一目瞭然です。

そんなこんなで、設計士という立場で物作りをされているNさんは、
とても興味を持って頂いたようで、仕立てを優先して、改めて、この生地をお選び頂きました。


ラムズゴールデンベールWoolと
エスコリアルWoolという、世界最高レベルの素材(糸)を使って、
世界最高峰の英国のミル(機屋)テイラー&ロッヂの手で織られた、夢の共演のような生地です。
ラムズゴールデンベールとエスコリアルWoolの、夢のような競演

一般に、Lumb’s Golden Bale(金に包まれた羊とでも訳しましょうか)と呼ばれる生地は、
ごく少量しか取れないメリノ種の極細の梳毛(ウーステッド)を使って織られます。
その、ごく少量しか採れない羊を飼育した牧羊業者に与えられる賞が、
ゴールデンベール賞(Golden Bale Award)なのです。

そんな希少価値のある糸と、これまた
カシミア以上に超希少なエスコリアル糸を使って織られています。
妖艶な、特別の織マーク

エスコリアル種については、
今のオーストラリアンメリノ種の起源とされ、
今でも純血のまま飼育されているのは、オーストラリアの隣、
ニュージーランドの5万頭(世界の羊の頭数全体の中で1%にも満たない数です)だけです。

少しだけエスコリアル種の歴史について触れておきますと、
モロッコのアトラス山脈の丘陵地帯を原産とする羊がスペインに持ち込まれ、
マドリッドの北西45kmにあるEL ESCORIAL修道院では、16世紀からこの種の飼育が始まりました。
当時の国王フェリペ2世(スペイン帝国の黄金時代)が、王族にのみ使用を許可したのが、
エスコリアルの名前の由来とされ、文字通りラグジュアリーな生地でした。

その後ナポレオンのスペイン攻略によって、
一旦エスコリアル種は絶滅したと思われていたのですが、
当時のスペイン王国は、親族や他国の皇族への大切なプレゼントとして、
この種の羊を贈っていたようで、その後、偶然発見された羊が19世紀初頭タスマニアに移され、
その後、現在まで純血種が生き残っており、今では英国のエスコリアル協会が指定する5社だけが生産しています。

この種は普通のメリノ種の1/3程の体で、繁殖能力も弱く出生率も低く、
原毛はカシミアの半分の軽さで収穫量も非常に少なく、カシミアの生産量にも達しません。
繊維が繊細すぎて製品化する事が難しく、2002年にようやく世界で最も細番手の羊毛として認定されました。

ちなみに、一般的なメリノ種は、
イベリア半島(スペイン)を原産とする最も有名な細毛品種ですが、
その起源は西アジアで、古代、地中海経由でイベリア半島に持ち込まれたそうです。以前は、
スペインの繊維産業の主力として、国費で飼育・改良され、近代までは国外への輸出が禁じられていたそうです。
それが18世紀に豪州に持ち込まれて更に改良され、
今ではオーストラリアンメリノ種として、オーストラリアの羊毛の75%を占めています。

こちらは夏用で、キッドモヘア60%に、エスコリアル20%+ゴールデンベール20%の割合で織られています。
キッドモヘアに、エスコリアルとラムズゴールデンベール

キッドモヘアの張りに加え、
何ともいえないラグジュアリーな手触りです。
夏物は痛み易いと云う理由から、高級な生地を避けられる方が多い中、
こんな超ド級の高級素材を選んでみられては如何でしょう(笑。汗対策はお伝えしますよ(爆。
絶妙のコンポジションに、絶妙の色使い。



1905年、名古屋市での創業以来、
紳士服地の分野で高い評価を受け続ける御幸毛織。
風合いが良く、永年着ても型崩れしない事が評価を得る最大の理由です。
日本の気候を知り尽くし、湿気の多い日本で快適に過ごせる工夫が盛り込まれています。
Miyuki(NAPOLENA)

オーストラリアに自社牧場を持ち、
原毛から整理工程まで自社で一貫生産を行う
世界でも数少ない、日本が誇る服地メーカーの最高峰です。

伝統的な設備と最新機器を巧く融合しながら生産する御幸毛織ですが、
その中でも特にこだわっているのが『洗絨』という、織り上がった生地を洗う工程で、
生地の風合いを決定付けると言っても過言ではなく、
上質な羊毛本来の風合いを最大限に引き出すことで自然な風合いと、
日本的で奥深い上品な美しさを醸します。

具体的には、
天然石鹸(天然油脂)と軟水化された大量の水で洗います。
またその洗い方も、今では手間が掛かるという理由でほとんど使用されていない
クラシックな洗絨機やプレス機を使いますので、薬剤などで人工的に与えられた光沢とは
一線を画す羊毛本来のナチュラルな輝きが生まれます。

御幸毛織の最高級ブランド『ナポレナ』の礼服地は世界最高峰の正統派です。


ウールに、シルク&カシミアが混ざっています。
もともとインクブルーなんですけど、下から茶が浮かび上がってきます。
僕の写真技術でお伝えできないのが残念でなりません。綺麗でゴージャスなウットリする生地です。
主にジャケット着用が前提とのことですが、下にカシミアニットを着て頂いて、是非、
スーツメインで着て頂きたい仕上がりです!サイコーです。





ボローニャの名門
ドラッパーズ社の社長の
ロッリさんがやって来てくれました!
たまたま先にいらしたお客様が選ばれたジャケット地が
ドラッパーズのロイヤルカシミアでしたので、「この生地なら、どんなスタイル?」
と、色々とアドバイスを頂きました。


終わった後、日本に来始めて10年になるロッリさんが
フグを食べた事がないとかで、フグを食べに。。
フグの酢の物、てっさに焼きフグ、
鍋に雑炊と、フグ尽くし。
楽しい夜でした。
大阪を「大阪弁、大阪ノリ」で満喫して頂けたようです!
ロッリさん、来年はディーーープな大阪を案内させて頂きます(爆。





TAYLOR & LODGE/テイラー&ロッヂの、ウール&シルクwithカシミアの生地です。
画像では巧く表現できずに残念ですが、今後こんな生地は出来ないでしょう。
これは、ゴードン・ケイ氏がまだテイラー&ロッヂにいらした頃の物。
最終の仕上げ行程(Finishing)が自社で行われた生地です。

服地作りは、仕上げ行程(Finishing)で全てが決まるとさえ言われ、
その仕上げ技術によって、服地の表情が大きく変わり、印象も異なるからです。
テイラー&ロッヂの色気は、織り行程ばかりか、その仕上げ技術によると言われてきました。

しかし、そのテイラー&ロッヂでさえ、現在は外注です。
このFinisherには、以前行ってきましたので、改めてレポートします。
仕上げ工程に時間をかけるから、英国服地には独特の色気が生まれるんですけどね。

ちなみにゴードン・ケイ氏は、
英国ハダスフィールドの名門ミル『TAYLOR & LODGE』の前社長を長く務められた方で、
5年前の2007年12月、50年近い現役生活に終止符を打たれました。
Sさん、、大切に長く着て下さることを願っています。





個性的な生地がお好きなTさん。
かれこれ6年、お付き合いを頂いている中で、
Tさんのお好みは、ほぼ理解できていますので安心です。
*何だか、画像が縦にのびているような、、気がするのは気のせい!?


ヴィンテージと言っても、色々な要素からして、
多分70年代後半~80年代前半頃の生地だと思うのですが、どうでしょう。
とても手のかかった織りで、ベースの紺色部分だけで、濃淡3色入っているんですよ!
こういう手の掛かった生地が織られなくばかりか、在庫品でもどんどん手に入らなくなってきています。


どうですか!粋ですね!!
社交の場(言い方、古っ!)で映えますね!
生地を見て頂くときは、可能な限り、環境を変えまして、
出来上がって違う!という事のないように見て頂くようにしています。


背中の絞りも、Tさんの好み通り!