スーツのコラム
サヴィル・ローの老舗(2002.3.28)



(画像をクリックすると拡大画像がご覧になれます)

 
ヘンリープールを知っていますか?

背広の語源とも言われている英国の「サヴィル・ロー」通りに店を構える著名なテーラーです。

創業は1802年。
顧客には、日本では昭和天皇を初め、白州次郎、吉田茂、伊藤博文らが。
そして海外ではヴィクトリア女王を初め、
ウィンストン・チャーチル、ナポレオン3世、J.P.モルガンらの超著名人が顧客に名を連ねる。
ただしヘンリープールでは、
原則として既存の顧客(生存中)はプライバシー保護のために名前を公表しておりません。

こう書くと、ヘンリープールがいかに歴史のある由緒正しきテーラーなのかが、ご理解頂けると思います。

そんなヘンリープールの次期社長、サイモン氏との日本市場向け新ライン打ち合わせの後、
工房内を、カッターのデイヴィット氏の丁寧な説明で案内してもらいました。

彼は、元ティモシーエベレストのカッターとして働いていたそうです。
そして2年前に、より確かな技術を学ぶためにヘンリープールに移ってきたそうです。
腕には1970年製のオメガスピードマスターが、こだわりです。

店内は、、入ってすぐに応接スペースがあります。
ここで各担当のカッターが採寸し、ビスポークしながらどんなスーツを作るのかが話し合われます。

多くのバンチ見本からお気に入りの生地を選んだ顧客は、
その後、裏地とボタンの色くらいは選ぶが、基本的にはお任せが多いとか。

その後、店舗の奥にある裁断場で、採寸値に合わせて型紙が引かれ、生地が切り抜かれます。

最後に、生地の特性に合った「肩・胸馬斯」「垂れ綿」「裏地」「釦」「縫い糸」などがセレクトされ、
裁断後の生地と共に、ひとまとめにされます。
ヘンリープールでは基本的には、ここまでがカッターの仕事です。

パンツは建物の地下で作業するパンツ専門の職人に回され、
ジャケットは、2〜5階のジャケット専門の職人が縫い上げていきます。

ヘンリープールでは1人の職人が1着を丸縫い≠オます。
同寸でもバラツキが出ないようにという考えの下、
1人の顧客には最初に担当したカッターや職人が後々も担当する事になります。
ただ生地によっては、職人さんの得手不得手があるので、例外として、
得意な生地毎にバランスよく割り振る場合もあるとか、、、

ヘンリープールの工場内から、ミシンの音は聞こえません。
職人さんが黙々と針を走らせています。

明かりを少しでも採ろうといわんばかりに、みんな机の上に座って作業をしています。
この人達の職人技が本場英国のビスポークスーツを支えていると思うと、
「元気で末永く頑張って下さいね」という思いになります。

日本でもいい職人さんは沢山いらっしゃるのに、
その技術を受け継ぐ若者がほとんどいない状態です。
消費経済の流れに負けて、伝統や文化が失われて行く世の中を見ていると、
とても寂しくなります。
大量生産・大量消費は経済成長の為には必要な事かもしれませんが、
必要以上に進んでいる今の日本を見て、
英国人の古きを守り、大切にするスタイルは真似るべき点ではないでしょうか。
せっかく物真似の得意な日本人なんだから。
今のままだと、日本の文化を完全に見失ってしまう時期はそう遠くない気がします。