毛足の長いアルパカ素材にファーの衿という、ゴージャスなコート。
ショールカラーに似せたアルスターカラーに、ダブルの打ち合いは片方留めという独特のデザインです。
袖口もターンバックと同じ厚みがあるものの、フラットな仕上げにしてあります。
ディーテール毎に写真を撮らせて頂けばと、後で気付きました。


仮縫段階のピークドラペルから、
ショールカラーへご変更のご希望があったのですが、
その変更は叶わず、止む無く「ショールカラー風」とさせて頂きました。
袖の切り替えも、仮縫時のターンバックからの変更ですが、試行錯誤の末、良い感じになりました。


ウエストを絞ったシルエットは、かなりスッキリしていますが、
モコモコの生地感によって、ふんわりした毛皮のような雰囲気になっています。
実際、見られた皆さんから「毛皮?」と聞かれました。


Oさんの発想、いつも楽しませて頂きます。
デザインの新たな可能性、創造の楽しさ、出来た時の喜び。
今回のコートも、完全オリジナルの唯一無二な存在として完成いたしました。。



馬車の時代、男にとってのステータスシンボルはコートでした。
モータリゼーションの波が押し寄せ、それはコートから車に代わりました。
そんな馬車の時代に思いを馳せながら、優雅に身に纏って頂きたいコートに仕立て上がりました。


ホワイトミンク30%、ベビーカシミア70%という弩級素材。
漂白はもちろん、染色も最小限に留められ、
風合いが保たれています。

光が当たると、真珠のように「ピーコック」に輝きます。
この綺麗な生地をサンプルで見られた瞬間、気に入られたTさんですが、
あらためて屋外で見て頂いた時、その「ピーコック」に移り変わるサマに惚れ込まれました。

バックスタイルのデザインは
ピエゴーネ(アクションプリーツ仕様)で仮縫を組ませて頂きましたが、
プレーンなセンターベント仕様に変更する事になりました。


行き過ぎた存在感が出ることを抑えるためデザインはシンプルに、、
その結果、、シンプルなデザインが故に、より素材感が引き立つコートになりました。


最後に、ボタン探しのエピソードです。
この素材に負けないボタン、かといって前に出過ぎないボタン、、
ボタン探しが大変でした。

この生地と同じような色の変化が起きるブラウンのマザーオブパールは
この生地の為に作られたかのような錯覚を覚えます。
見つけた瞬間、体が震えました。

Tさん、いつもありがとうございます。
お手入れについて、しっかりお伝えしてまいります。