9月初旬に今の新しい店舗に移って4ヵ月弱、
アッという間に時間は過ぎていきましたが、本当に充実していました。
お客様にご満足頂ける物作りを!と工房を併設したのですが、その効果が確実に見えました。

今までなら、ちょっとしたお直しやプレスも一旦お預かりしないと無理だったのですが、
今だと、雑談している間や、お食事に行かれている間に済ませておけるという事が可能になりました。
実際、何度もそんなケースがあって、お客様にも実感して頂きました。

またフルオーダーに関しましても、
お客様と作り手とがダイレクトに絡める事で、
より、ご希望に叶う物作りが出来るようになったと実感しました。

以下の・・・で囲まれた内容は、以前から、僕がよく言っている事になるのですが、
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たくさん素敵なスーツが生まれ、嫁いでいったのは、皆様のお陰です。
今年もお客様をはじめ、縫製担当、生地担当の皆さまに支えられ、応援をいただきました。
お客様からのご注文がなければ売り上げは立ちません。
それを仕立てて下さる職人さんがいなければ、洋服はできません。
そして、良い生地が手に入らなかったら、良い洋服も生まれてはきません。
本当に、どれ1つとして欠けてしまうと、マッセアトゥーラは存続できなくなるんです。
マッセアトゥーラが、いかに多くの方たちに支えられて存続しているかを実感せざるをえません。
もっと言うと、同業の皆さんの集まり〝Boits〟の存在も、、
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この事を、本当に多く実感した1年でした。

優れた技術はなくなりつつあります。良い生地も織られなくなりつつあります。
そして日本から、良い物作りの環境がなくなろうとしています。
日本の生地屋さんは販売後のクリーニング規格をみて
ワザと薬品漬けにして生地から光沢を奪います。
泣く泣く、仕方がなくそんな処理をします。
何を見て物作りしているのか、と、
嘆いておられました。。

民芸運動の柳宗悦も『日本の手仕事』の中で物作りがなくなる事を嘆いています。
谷崎潤一郎達も『陰影礼賛』の中で、木製だった便器が真っ白な陶器になったと嘆いています。

今も昔も言われ続けてきたこと、「なくならないよ!
なくなってもそれに代わる物が生まれるんだ!」と仰る方も多いのですが、
人間の手が生み出す物は、人間の手でしか生み出す事が出来ず、手で生み出した事のない人が、
オペレーションだけで生み出した物は、もはや人間が作った物じゃない気がするんです。
オペレーターは幾らでもいたとしても、そのベースになる部分を生み出せる人、、
僕が思うのは、そんな技術者が、日本だけじゃなく世界的に見て、
これで最後かと思う時期にやってきたと云う事です。

何も作れない自分ですが、それでも何が出来るのかを考え、
これからも、少しづつですが、今の店と共に、前を向いて歩いていきます。
こんな難い事を言っても、結局は皆さまにお望み頂ける物作りをしないと始まりませんね(笑。

2012年は原点に立ち返る1年でした、心からありがとうございました!
本日をもちまして、年内の営業を終わらせて頂きます。
年明けは、2日より営業させて頂きます。

マッセアトゥーラ
柳瀬博克
中山堅暁