英国の老舗テーラー『ヘンリー・プール』が、

雑誌『NILE’S NILE』で紹介されましたので、紹介させて頂きます。



ヘンリープールのHPは http://www.henrypoole.com/ です。

 





紳士服のエレガントの最高峰

ヘンリー・プール

アンガス・カンディ

ヘンリー・プール社長

世界に名を残す紳士たちに愛され続けてきた

ヘンリー・プールのスーツ。

瞬間的な流行を追わず、いつの時代にも通用する

グッドテイストを作り続けること。

それが『BRITISH WAY OF LIFE』である。



Photo Tomoaki Hattori Text Junko Iwakuma



歴史を持ったブランドの服を身につけるとき、

布地が身体にフィットした瞬間に、

その伝統の重さを感じることがある。

一八〇六年、軍服専門店として発祥した

ヘンリー・プールのスーツがまさにそれだ。



二代目店主であったヘンリー・プールが、

世界的に有名なロンドンのサヴィル・ローに

最初のカスタムテーラーとして店を構えたのが一八四六年。

店舗を社交場として開放し、巧みな社交術でロンドンでも評判となる。



ヘンリー・プールの顧客リストには、

シャルル・ドゴール元仏大統領、作家のチャールズ・ディケンズ、

ウィンストン・チャーチル元英首相など、

誰もが知っている紳士たちが名を連ねている。



日本人の顧客も多い。

古くにはロンドンに開設された日本大使館の職員たちの名前もある。

着物姿で渡英した彼らが、

サヴィル・ローで三つ揃いの洋装を仕立てたところから

“背広”と呼ばれたという逸話もあるのだ。



また、吉田茂元首相や、一九一二年にご訪英した

昭和天皇のお名前を見ることもできる。

当時皇太子であった昭和天皇は、最初の寄港地、

ジブラルタルに到着した。

そこで採寸が行われ、次の寄港地であるポーツマスでは

仮縫いが行われた。

最終目的地のロンドンに到着したときには

みごとに仕立てあがった正装で、

宮廷の晩餐会に出席なさったというのだ。



紳士服の歴史を紡いできたヘンリー・プール社は、

現在六代目の社長、アンガス・カンディ氏が率いている。

大柄な身体にダークな色のスーツを着、

まさしく英国紳士そのものといったカンディ氏は、

最近の紳士服の傾向についてこう語る。



「アメリカではカジュアルフライデーなどが提唱されていますが、

 私はやはりエレガンスが好きです。

 近年、紳士服の世界では、エレガントなスタイルを好む傾向が、

 特にヨーロッパで顕著です。

 若い人たちは結婚するときにフロックコートや燕尾服などを

 着用するようになっていますが、それは私には喜ばしいことですね。



 また、オーダー服も人気を博するようになってきました。

 わが社とは一九六四年からのつきあいになる松坂屋さんが、

 今年からパターンオーダーを開始することになって、

 私はとても喜んでいるのです」



カンデイ氏のいうパターンオーダーとは、ヘンリー・プール社が、

販売に際して使っているロンドンマーチャント

(世界のテーラーに生地を供給する生地問屋)の生地見本と

まったく同じものが日本で注文できるシステムである。



バンチ(生地見本)で選べる総生地点数は一千点以上。

採寸によりパターンを決定した後、

シングル、ダブル、ボタン数やベントなど、

全体的なデザインや微調整を行い、

自分だけの一着をオーダーできるのだ。



ヘンリー・プールの基本コンセプトは『BRITISH WAY OF LIFE』。

ナチュラルなショルダー、ウエストシェイプ、

そしてフィット感を重視する職人技の仕立てである。

「素材によってカッティングを変える」というほど

大切に素材を扱うノウハウは、

生地を扱って約百五十年という伝統の中に蓄積されてきたものだ。



伝統について、カンディ社長は言う。

「最近、サヴィル・ローにも新しいデザイナーたちが入ってきて、

 だんだんと変化しています。

 ヘンリー・プールの職人も三分の一が三十五歳以下の若い職人です。

 しかしこの若い人たちが育ち、伝統を受け継いでくれれば、

 ファッション傾向がどう変わろうとも、

 スタイリングのディテールを過大に強調することはないという

 わが社のスタイルは継承されていくでしょう。

 実は私も、そして私の息子も若い頃は、

 伝統に反発した時期もありました。

 しかし今ではへンリー・プールの伝統の素晴らしさを

 深く実感しています。

 ヘンリー・プールのスーツは瞬間的な流行を追うものではありません。

 いつの時代でも適用するグッドテイストを大切にしているのです」



(「Nile’s NILE」11月号 106ページより掲載)